大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 平成7年(ネ)512号 判決

大阪市北区中津四丁目七番三号

控訴人(一審原告)

株式会社ダイハン

右代表者代表取締役

植村元昭

大阪府吹田市東御旅町四番二六号

被控訴人(一審被告)

株式会社千日総本社

右代表者代表取締役

山品孝從

右訴訟代理人弁護士

中嶋邦明

平尾宏紀

井上楸子

右輔佐人弁理士

鎌田文二

東尾正博

鳥居和久

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、原判決別紙イ号物件目録記載の物品を製造、販売してはならない。

3  被控訴人は、控訴人に対し、金一〇〇万円及びこれに対する平成六年四月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二  事案の概要

本件事案の概要は、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」欄に記載のとおりであって、控訴人は、被控訴人が製造販売しているイ号物件が本件考案の技術的範囲に属するとして、イ号物件の製造販売の停止、並びに本件実用新案権侵害による控訴人の損害一〇〇万円の賠償及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成六年四月九日からの民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を請求するところ、被控訴人は、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属さない、仮に属するとしても、被控訴人は本件実用新案権について先使用による通常実施権を有するとしてこれを争っている。

第三  争点に関する当事者の主張

本件の争点は、イ号物件が本件考案の技術的範囲に属するか否か(争点1)、被控訴人は、本件実用新案権について先使用による通常実施権を有するか(争点2)、被控訴人が損害賠償義務を負う場合に、控訴人に賠償すべき損害の金額(争点3)であり、これに関する当事者の主張は、原判決の事実及び理由「第三 争点に関する当事者の主張」欄に記載のとおりである(但し、原判決一六頁九行目の「昭和六二年」を「昭和六三年」に改める。)。

第四  争点に関する判断

当裁判所も、被控訴人は本件実用新案権について先使用による通常実施権を有しているものと判断する。その理由は、次のとおり補充、付加するほかは、原判決の事実及び理由「第四 争点に関する判断」欄一に記載のとおりである(但し、原判決二四頁一〇行目末尾に「ちなみに、証人玉田の証言によれば、ライフストアでは取扱商品をコンピューターで管理(商品登録)しているところ、乙第二号証添付の伝票には商品コードが記載されているから、右伝票が作成された時点(昭和六三年一月一五日)において、既に「太巻芯(特)」、すなわちイ号物件について本格的な取引が始まっていたことが窺われる。」を加える。)。

控訴人は、当審においても、争点2について、乙第二号証添付の伝票記載の仕入本数二〇本が、ライフストアのような大型店の伝票記載の本数としては不自然であること、被控訴人の当時の取引(先使用)を裏付ける証拠が右伝票一枚しかないこと、イ号物件の発案に関する証人玉田と証人新田の証言が矛盾することを主張するが、これらを採用することができないのは、原判決が説示しているとおり(但し、前示の追加あり)である。

また、控訴人は、「すしの雑誌」(乙第一号証の1~7)に掲載された記事にいう「錦糸卵」とは「薄焼卵を細かく切ったものをシート状に集めたもの」を指すと主張するが、これは「シート状の薄焼卵」を指すものとするのが相当であり、この点に関する控訴人の主張も採用できない。その理由は、原判決の事実及び理由「第四 争点に関する判断」欄二において、原判決が説示しているとおりである。

第五  結論

以上の次第で、控訴人の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却した原判決は相当である。

よって、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上野茂 裁判官 竹原俊一 裁判官 長井浩一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例